重度後遺障害被害者が施設入所中の場合(将来の介護費用、家屋等改造費)
1 重度後遺障害被害者が施設入所中の場合の、将来の介護費用、家屋等改造費
(1)将来の介護費用
脳損傷や脊髄損傷(頸髄損傷・頚髄損傷など)による、遷延性意識障害、重度の高次脳機能障害、重度の麻痺(四肢麻痺、片麻痺、対麻痺)等の、介護を要する重度の後遺障害事案の場合、将来にわたり、交通事故被害者の介護が必要になります。
そして、かかる介護を、介護業者に依頼する場合、費用がかかります。また、交通事故被害者の近親者が介護をする場合、近親者の肉体的、精神的な負担となります。
そこで、交通事故の重度後遺障害事案における裁判実務では、このような費用や負担を、将来の介護費用として、被害者の損害と認めています。
詳しくは、「将来の介護費用(重度後遺障害事案)」をご覧ください。
(2)家屋等改造費
また、このような事件において、交通事故被害者は、家屋等改造費を請求することができます。
具体的には、浴室・トイレ・出入口の改造費などが、認められています。
詳しくは、「家屋・自動車等改造費(重度後遺障害事案)」をご覧ください。
(3)問題点
この点、将来の介護費用は、施設介護よりも、在宅介護の方が、高額になることが多いです。
また、家屋等改造費は、交通事故被害者を在宅介護することを前提とした損害になります。
そこで、交通事故被害者が施設入所中の場合、在宅介護を前提とした、これらの損害が認められるかが問題となります。
これらの損害額は高額になるのが通常ですので、交通事故被害者にとっては重大な問題となります。
(4)判例の傾向
そして、判例の傾向としては、仮に、現在、交通事故被害者が施設入所中であっても、将来的に、施設退所が見込まれ、近親者が、在宅介護をする意向であり、そのための準備も進めており、また、被害者にとっても、施設介護よりも在宅介護の方が望ましい場合、在宅介護を前提とした、これらの損害を認めている状況です。
逆に言いますと、近親者が、相当の期間が経過しているにもかかわらず、在宅介護に向けた準備や検討をしていない場合や、交通事故被害者にとって、感染症等の合併症の危険の存在等から、在宅介護よりも施設介護の方が望ましい場合、在宅介護を前提とした、これらの損害が認められない可能性があります。