将来の介護費用(重度後遺障害事案)

1 将来の介護費用

(1)将来の介護費用

脳損傷や脊髄損傷(頸髄損傷・頚髄損傷など)による、遷延性意識障害、重度の高次脳機能障害、重度の麻痺(四肢麻痺、片麻痺、対麻痺)等の、介護を要する重度の後遺障害事案の場合、将来にわたり、交通事故被害者の介護が必要になります。
そして、かかる介護を、介護業者に依頼する場合、費用がかかります。また、交通事故被害者の近親者が介護をする場合、近親者の肉体的、精神的な負担となります。
そこで、交通事故の重度後遺障害事案における裁判実務では、このような費用や負担を、将来の介護費用として、被害者の損害と認めています。

そして、将来の介護費用は、交通事故の重度後遺障害事案における裁判実務では、概ね、以下のように考えられています。
職業付添人 実費全額
近親者付添人 1日につき、8000円

但し、具体的な看護の状況により、増減することがあるとされています。
また、職業付添人について、実費全額といっても、常に、実費全額が認められるわけではありませんので、ご注意ください。

(2)具体例

計算式
例えば、交通事故被害者が、男性で、症状固定時に年齢は50歳で、妻(年齢40歳)と同居していて、妻が、将来にわたり介護をする予定である場合を考えます。
この場合、将来の介護費用は、交通事故の重度後遺障害事案における裁判実務では、以下のような計算式で計算されるのが、一般的です。
(1日につき、8000円)×365日×「平均余命年数に対応する中間利息控除係数」
以下、順に説明いたします。
「平均余命年数」
平均余命年数は、年齢50歳の男性の場合、統計上(平成23年簡易生命表)、31.39年とされています。
「中間利息控除係数」
中間利息控除は、金銭は通常利息が発生するものであることから、将来取得予定の金銭を、現在の金銭価値に引き直す場合に用いられるものです。
そして、将来の介護費用の場合も、将来にわたって介護費用が発生しその損害が賠償されることになりますが、他方、損害賠償は、通常、現時点で一括払いされますので、将来取得予定の金銭を、現在の金銭価値に引き直す必要があり、その間の中間利息を控除すべきとの考えに基づきます。
そして、交通事故の後遺障害事案における裁判実務では、原則として、年5%のライプニッツ係数(複利計算)が採用されています。
そして、「平均余命年数(31.39年)に対応する中間利息控除係数(年5%のライプニッツ係数)」は、15.5928とされています。
よって、上記具体例の場合の将来の介護費用は、原則として、
(1日あたり、8000円)×365日×15.5928=4553万0976円
になります。

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