脊髄損傷
1 脊髄
(1)脊髄の構造
脊髄(せきずい)は、いわば神経の束です。
脊髄は、脊柱(せきちゅう)(いわゆる、背骨)の管の中にあり、脊髄が保護される構造になっています。
脊髄は、その高さ(高位)によって、頸髄(頚髄)(けいずい)、胸髄(きょうずい)、腰髄(ようずい)、仙髄(せんずい)、尾髄(びずい)に区分されます。
(2)脊髄と脊椎の違い
脊椎(せきつい)は、脊柱を構成する個々の骨です。
脊椎は、脊椎骨、椎骨ともいいます。
脊椎も、その高さ(高位)によって、頸椎(頚椎)(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)に区分されます。
(3)脊髄の役割
脊髄は、脳と身体各部との間を連結し、多種多様の信号を伝える重要な役割があります。
また、反射運動においては、脳への連絡が省略されて、脊髄自身が指令を出します。
脊髄は、脳とともに、中枢神経に分類され、一度傷付くと元に戻ることはありません。
2 脊髄損傷
(1) 脊髄損傷による後遺障害
交通事故により、脊髄が損傷すると、麻痺(四肢麻痺や両下肢の対麻痺)が生じます。
また、この場合、通常、広範囲にわたる感覚障害や、尿路障害(神経因性膀胱障害)などの腹部臓器の障害が生じます。
また、脊柱の変形等が生じることも多いです。
(2) 脊髄損傷による麻痺の範囲(高位診断)
脊髄損傷の場合、麻痺の範囲は、脊髄損傷の生じた高位(部位)によって異なり、通常、以下のようになるとされています。
頸髄損傷(頚髄損傷) | 四肢麻痺 |
胸髄損傷 | 両下肢の対麻痺 |
腰髄損傷 | 同上 |
仙髄損傷 | 下肢の麻痺は生じない。 |
尾髄損傷 | 同上 |
(3)脊髄損傷による麻痺の範囲(横断位診断)
また、脊髄損傷の場合、麻痺の範囲は、脊髄損傷の生じた断面(横断位)によって異なり、通常、以下のようになるとされています。
ア | 脊髄損傷が、脊髄の全断面にわたって生じた場合 |
---|---|
この場合、その部位の下方について、運動障害とほぼ同じ範囲に、感覚障害が生じます。 | |
イ | 脊髄損傷が、脊髄のいずれか半側に生じた場合 |
この場合、半側の下肢の運動障害及び感覚障害のほか、他の側の感覚障害が生じます。 | |
ウ | 脊髄損傷が、頸髄(頚髄)を中心性に生じた場合(中心性脊髄損傷(頸髄損傷・頚髄損傷)) |
この場合、下肢よりも上肢に、重い麻痺が生じます。 |