麻痺(脳・脊髄損傷による重度後遺障害事案)
1 麻痺の範囲
麻痺(まひ)の範囲は、次の4つに分類できます。
(1)四肢麻痺
四肢麻痺(ししまひ)とは、両側の四肢の麻痺のことです。
(2)片麻痺
片麻痺とは、一側上下肢の麻痺のことです。
(3)対麻痺
対麻痺とは、両下肢又は両上肢の麻痺のことです。
(4)単麻痺
単麻痺とは、上肢又は下肢の一肢のみの麻痺のことです。
2 脳損傷による麻痺と、脊髄損傷による麻痺
(1)脳損傷による麻痺
通常、四肢麻痺、片麻痺、単麻痺が生じ、対麻痺が生じることはないとされています。
(2)脊髄損傷による麻痺
四肢麻痺又は両下肢の対麻痺になることが多いとされています。
3 麻痺の程度
麻痺の程度は、運動障害(運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障)の程度により判断されます。そして、次の3つに分類されます。
(1)高度の麻痺
高度の麻痺とは、障害のある上肢又は下肢の連動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作(下肢においては、歩行や立位、上肢においては、物を持ち上げて移動させること)ができないものをいいます。
具体的には、次のものをいいます。
ア | 完全強直又はこれに近い状態にあるもの |
イ | 上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの |
ウ | 下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの |
エ | 上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの |
オ | 下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの |
(2)中等度の麻痺
中等度の麻痺とは、障害のある上肢又は下肢の連動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいいます。
例えば、次のものをいいます。
ア | 上肢においては、(1)障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は(2)障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの |
イ | 下肢においては、(1)障害を残した一下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は(2)障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの |
(3)軽度の麻痺
軽度の麻痺とは、障害のある上肢又は下肢の連動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているものをいいます。
例えば、次のものをいいます。
ア | 上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの |
イ | 下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、(1)障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は(2)障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの |